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2025年5月18日 日本語支援者向け「にほんご多読」研修をしました!

  • 執筆者の写真: YN
    YN
  • 5月18日
  • 読了時間: 8分

こんにちは。今回もにほんご多読のお話です。

子どもたちの読書

先日、日本語支援をしている方々に向けた「『にほんご多読』『読み聞かせ』-『教えない』日本語学習支援-」という研修をしました。

今回は外国ルーツを持つ子どもたちの日本語支援をしているボランティアの方々向けの研修でした。この地域で中心的に長く子どもたちの日本語支援をなさっている方が研修を提案してくださいました。ありがとうございます!

日本語ボランティア向けににほんご多読活動を紹介する研修は、昨年度に続き2回目です。

<前回の記事>


こうして地域日本語教育の現場に多読が少しずつ広がってくれれば、本当にうれしいです。

前回はオンラインだったのですが、今回の研修は対面でした。受講者のみなさんの読み聞かせワークショップでの楽しそうな様子が目の前で見られたことは、わたしにとって大きな喜びと共に収穫でもありました。

30名もの人が参加してくださったのも、多読や読み聞かせという活動に興味を持っている方が多いという証だと思います。


<研修の内容>

研修は2時間で、前半は多読が言語の習得にとても有効だというお話や、多読活動が地域日本語教育に適した活動であるということをご紹介する時間でした。

このように理屈っぽいことにけっこう時間を取るのですが、やはり多読活動がどうして良いのかということを、わたし個人の主観や経験からだけではなく、客観的なことを踏まえて解説することで説得力が増すのではないかと考えています。そのことで、受講者のみなさんのそれぞれが自信を持って活動に取り入れることができるといいなと思うのです。

それでも、理屈ばかりでは眠くなってしまうし、実際の活動につながりにくいので、今回も「にほんごたどく」ウェブサイトにある多読活動の様子の動画なども視聴して、みなさんに多読活動のイメージを持ってもらいました。特に、多読をしている方々の楽しそうな様子、集中して本を読んでいる様子を実際の映像で観ることは、何にも増して説得力があります。

アンケートの回答でも、動画を視聴してイメージが持てたというコメントが多くありました。


「授業風景」<にほんごたどく>

「多読授業入門」<ASK INFO>


読み聞かせ

そして、研修後半には実際に読み聞かせをしてみるワークショップをしました。ペアで好きな本を選んで、みなさん、楽しそうにお互いに読み聞かせをしていました。そして、読み聞かせ活動についての感想も活発に交わされていました。


<書籍の購入!>

今回の大きな収穫の1つは、何といっても、主催者である国際交流協会が今回の研修に合わせて多読の書籍を購入してくださったことです!


『にほんご よむよむ文庫』シリーズ/『にほんご多読ブックス』シリーズ

『げんき多読ブックス Box1,2』シリーズ


ダメ元でお願いしてみたつもりだったのですが、快諾してくださり、たくさんの書籍を購入し用意してくださいました。ありがとうございます!

そのおかげで、30名もいらした参加者のみなさんが、同時にそれぞれが好きな本を選んでワークができたのです。書籍を購入していただけたことは、今回の研修でぜひ強調したいところです。

気軽に本を手に取ることができる環境ができたことで、今後、外国ルーツを持つ子どもたちだけでなく、大人の方たちにも活用していただけたらうれしいです。(今回の研修参加者のうち、何割かは大人向け日本語教室で活動しているボランティアの方もいらっしゃいました。)

いろいろな地域の国際交流協会や図書館などに、日本語多読用の書籍が設置されればいいなと夢見ています!


※おまけ情報※

図書館向けの多読体験セット無料貸出もやっているそうです!この中には、日本語多読の本も含まれています。

読書バリアフリー体験セット<文字・活字文化推進機構>


<子ども向けの内容ではないけれど>

わたしは大人向け日本語教室の活動をしているのですが、子どもの支援は基本的にはしていません。(「既卒」と呼ばれる義務教育修了後に来日した10代後半の若者の支援は少ししています。)外国ルーツを持つ子どもたちに対する日本語支援の知識もスキルもありません。

ですから、今回の研修では、特に子ども向けに特化した内容になっているわけではありませんでした。研修を担当するにあたり、この研修を提案してくださった方にいろいろご相談にのっていただきました。

子どもは、ただ日本語が上手になればいいということではなく、子どもとして成長、発達していくことを含めて(というか、それを軸としての支援かもしれませんが)考える必要があるとのお話を伺いました。(とてもよいお話をたくさん伺ったのですが、わたしの理解が追いついていなかったら、すみません。)

そこで、研修では、子どもにとっての読書の大切さや情操教育としての読書について、文科省の資料を少しですが、ご紹介することにしました。

子どもの読書活動の推進に関する有識者会議 論点まとめ」文科省


子どもたちが日本語での読書を通して日本語の楽しさ、物語の楽しさを感じて、そして、日本語の習得と共に、母語での読書のように自分たちの世界を広げて成長していってほしいです。


<アンケートから>

研修後のアンケートの回答を少しご紹介します。

21名の方がアンケートに回答してくださいました。ありがとうございます!

21名全員の方が研修が「よかった」「とてもよかった(76%)」と回答してくださいました。( ;∀;) よかった理由としては以下のようなコメントがありました。ほんの一部をご紹介します。


★多読は、日本語を楽しく学ぶために、是非必要ですね。

★楽しむことで「もっと読みたい」という気持ちが生まれ自律学習に繋がれば日本語の上達にもの凄く役立つと思いました。

★具体的な実践例のビデオも見せていただきわかりやすく、参加者とのグループワークもあって楽しかったです。


また、自分の活動に取り入れてみたいかを伺ったところ、「取り入れてみるつもりだ(76%)」「取り入れてみるかもしれない」と回答した方が合わせて9割!(残りは「わからない」という回答)

多くのみなさんに多読や読み聞かせ活動を受け入れていただけたことが分かりました。う、うれしい…。

研修全体の感想も一部ご紹介します。


★読み聞かせや多読の活動を通して楽しく日本語学習ができる、今までは学習者に教えることが主だったので、そんなにうまくいくのかなー?とやや不安があるのも正直なところです。

焦らずこれまでのやり方と並行して取り入れて生徒と一緒に「楽しむ」時間にできたらいいな、と思います。

 →わたしから:活動を取り入れることに不安を感じていらっしゃる方も、とにかくやってみようという気持ちになってくださったことは、本当に講師冥利に尽きます。(もちろん、講師として十分に伝えきれなかったと反省もあります!)


★恐らく、子ども達は読み聞かせには興味を示し、きっと、熱心に聞いていると思います。それを続けていく内に、自然に自分から多読するようになるのでしょうか。それとも、そこには、多読に繋げる何らかのテクニックが必要なのでしょうか。

そこがよくわかりませんでしたが、読み聞かせは、是非やってみたいと思いました。放課後の日本語支援の教室が、学校の教室での授業と全く別のものになって、遊び場であり、リラックスして自分を解放しながら、いつのまにか、日本語を使って会話をし、考えられるようになったら、素敵ですね!!

 →わたしから:支援活動として多読や読み聞かせを続けるうちに、自律学習として自分でも多読をするようになるのか、何かテクニックはあるのかという疑問を書いてくださいました。テクニックについては、わたしも模索中ですが、できるだけ楽しく活動することを心がけています。

多読というか読書というものは、人によって好き嫌いもあると思います。誰にでも受け入れられるというわけではないという限界はあるでしょう。それでも、もしかしたら気に入ってくれるかもしれないという可能性を信じて活動しています。

ぜひ、取り入れて、いろいろ工夫をしてみてください!


★A1-B2の各段階における学習者に沿った「読み聞かせ」活動の実践例を知りたい。

 →わたしから:「日本語教育の参照枠」のレベル基準であるA1からB2に沿った実践例を、ということですが、レベル別の実践例というのは今のところまとまっっているものは、わたしも見つけていません。外国人への日本語の「読み聞かせ」の実践例自体がほとんどないのではと思います。(どなたかご存じでしたら、ぜひ教えていただきたいです)

日本語多読の読み物はどれもレベル別になっていますので、レベルは合わせられると思います。お答えになっているでしょうか。


★まだ日本語ボランティアを始めたばかりで緊張と戸惑いばかりですが、自律学習へ導くことも大事な役割という言葉にはっとさせられました。

 →わたしから:研修では、日本語ボランティアの役割は日本語支援だけではなく自律学習(自分で学習していける力)へつなげていくような支援をすることも大切なことではないかとお話させていただきました。共感していただけたことは本当にうれしく思います。


たくさんの感想をいただき、ご紹介しきれずに申し訳ありません。しっかりと今後の参考にさせていただきます!


少しでも多くの地域日本語教育の現場に、多読活動が広がってくれればうれしいです。


にほんご多読のリンク集はこちら<日本語多読の部屋>


(山)

※本記事の著作権は執筆者に帰属します。



 
 
 

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